いきなり便器ですみません。
「ナッジ」と言えば便器、男子用トイレなのです。
1.ナッジ理論とは
「ナッジ(Nudge)」の訳は「(注意を引くためにひじで)そっと突く」というものです。
強制することなく行動を促すときに、ひじで相手を”チョン”とする時ありますよね。直訳はそういう意味です。
強制や命令、報酬などは関係なく、人々の行動を予測できる範囲に修正する仕掛けの事を「ナッジ」と言います。
2017年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学教授のリチャード・セイラーと、キャス・サンスティーンが2008年に定義しました。実践 行動経済学という本に詳しく書かれています。
楽天市場やAmazonで“>行動経済学と検索すると書籍が多く出ています。
それほど古くないのですね。
経済学に対し、人間はかならずしも合理的に行動しないという考えから「人間らしさ」を加味した行動経済学を導きました。
事例によってなるほど!と思ってもらえばよいと思いますので、「ナッジ」の例を紹介します。
2.ナッジ理論:スキポール空港のハエ
すみません、また男子トイレです。
ナッジの事例として一番有名なので最初に書きます。
この男子トイレには3人の顔が書いてありますね。便器に描かれた絵がポイントなのです。
オランダ・アムステルダムのハブ空港「スキポール空港」の男子トイレの便器内に、ハエの絵を描いたそうです。
この写真は顔ですが、もう少し下の中央ではない所にハエの絵を描いたのです。
ハエがいると思うと男性は、そこを目掛けて用を足します。無意識にです。
もう分かりましたよね!
飛沫が少なくなり便器の周辺が汚れなくなるのです。実際に掃除の労力が80%削減されたそうです!
ずいぶん汚していたのですね。それなら全員座ってやればいいのに。そうすれば労力が100%削減されるよ。
という突っ込みはしませんが、
●「一歩前でお願いします」
●「いつもきれいにしていただきありがとうございます」
という張り紙よりよっぽど効果があったのです。
これが「ナッジ」、強制せずに行動に影響を与えるという事です。
ハエが進化して、サッカーゴールや弓矢の的などがあるようです。写真のような顔はどうでしょう?
3.ナッジ理論:危険な山道
はい、山道で車を運転しています。いい景色ですが、危険なカーブですね!
「この先カーブ スピード落とせ!」
「対向車注意!」などありますよね。
事故が起きないようにするには、どのようなナッジがいいと思いますか?
山道のカーブでは、手前で道路の幅を狭くしたそうです。(ガードレールの位置をずらす等)
道幅が狭くなると自然と速度を落としますね。道路の幅が狭いと危ないような気がしますが、スピードを落とすという視点で考えれば合理的なのでしょうか。
確かに有効かもしれませんね。
4.ナッジ理論:階段
この上り階段を見るだけで疲れてしまいますね。
写真のように階段だけならば上るしかないですが、エスカレータやエレベーターと併設されていると階段は使いたくないですね!
ナッジを使って、階段を利用してもらうようにするにはどうしましょうか?
事例を二つ紹介します!
階段にカロリー表示
写真の左側に見えますか?一段が0.1Kcalですね。
このようにカロリー表示をしたのです。
コメントも入っていますね。カロリーを摂取しすぎている人やダイエット中の人がこれを見てやってみるか!となるかもしれませんね。
確かに面白い発想です!強制ではなく自然と階段を使うようになるのでしょう!
スウェーデンのストックホルムの地下鉄の階段は、ピアノの鍵盤の模様になっている箇所があるそうです。しかもセンサーを仕掛け、音も鳴るようになっています。楽しそうですね。
沢山の人が今日はエスカレーターを使うのはやめて、階段を歩こう!健康にもいい!このようになればいいですね。
それでは階段に関してもう一つ
近畿大学の事例
近畿大学で行われた、混雑時の階段への誘導です。
エレベーターやエスカレーターが時間によって混んだのですね!
大学では講義の時間が決まっているから、集中するのでしょう。企業のお昼休みも同じでしょうか。
学生さんの誘導は手強そうですね!
「3階までどういきますか?
階段48秒、エスカレーター56秒、エレベーター1分33秒」
このようなポスターをエレベーター内に貼りました。
その結果、階段を使う学生さんが増えたそうです。
この作戦は思いつかないですねー
ナッジの活用において、嘘はダメですからそれぞれの時間は本当のはずです。
一番早いから、階段を使う学生が増えたのでしょうか!
5.ナッジ理論:放置自転車
違法駐輪です。なかなか明確な罰則はないので違法ではないのでしょうか。
こんな弱々しい駐輪禁止マーク。しかも駐輪されています。
駅前などはよく問題になりましたね。
ナッジによる対応はどうでしょう!
不要自転車です
ここに放置している自転車はご自由にお使いください。
上記のような看板を立てたところ、放置自転車がなくなったそうです。
カギをかければ使われないのでしょうが、車に積んで持っていかれる可能性もあるので放置されなくなったのでしょう。
私有地ならこのような看板自由に立てられますし、公有地も警察に相談してみればよさそうです。
別の例として、小学生に駐輪禁止のマークを書いてもらい貼り出したという実例もあるようです。
6.ナッジ理論:タバコのポイ捨て
次はこれです。タバコのポイ捨て!
タバコを吸ってはいけないという地域(道路)が出来ましたが、そういう場所ではポイ捨ては少ないでしょうね。
しかしそういう規制が無いところは注意するにも一瞬で分からないでしょうから、難しいですね。
環境にも良くないですし、火事の危険もありますね。
どうしたらポイ捨て無くせるでしょうか!
正解は灰皿を置いたのです!
投票制の灰皿を置いたのです。タバコの吸い殻での投票です。
投票するために、そこでわざわざタバコを吸わないでしょうから多くの吸い殻が集まったようですね。
(この映像を見ると、ロナウドの方が人気があったようですね)
素晴らしいアイデアです。
イギリスでの話ですが、違う地域にも広がり○○VS○○いろいろな対決があったようですよ。
ポイ捨てするような人たちが、興味がある内容(有名人)にすることが必要ですね。
7.ナッジ理論:ジャパネットたかた(TVショッピング)
テレビは最近あまり見なくなりましたが、「ジャパネットたかた」のCMは見ますね!
「今なら1万9800円!」「本日中にお電話ください!」
良い製品を売っているので問題はないのです。価格は比較した事がないので分かりません。
ジャパネットたかたの良し悪しではなく、「今なら良いものが安く買える!」というように本来ならすぐに必要ではなく十分に時間をかけて考えればいいものを、「今なら!」と慌てさせてしまうのですね。そして電話をしてしまう。
強制ではないので悪くはないですよね。スーパーや衣料店でも行っているタイムセールみたいなものでしょう。
しかし人間は限られた時間で良いものを安くという誘惑で決断してしまう。これもナッジと言うべきなのでしょう。
8.ナッジ理論:コストコ
コストコは会員制にして、サンクコスト効果を利用しているのでしょうか?
年間の会員費をとり、会員は元を取るために買い物に行ってしまう。まさに払ってしまった会費がもったいなくて、買い物をしてしまう。無駄なものまで買ってしまう!
現在の年会費は4,880円(税込)…2021年10月調べ
ちょっとした買い物では高くつきますよね!
あとは、コストコって最初にテレビやジュエリーなど誰が買うのか?と思うような高い製品が並んでいますよね。
アンカリンク効果と言って、最初に高いものを顧客に見せると後から見たものは安く感じる効果があるのです。だから売れなくてもいいので置いておくのです。
そんなコストコでのナッジというと
コストコの大きなカート
大きなカートしかありませんよね。
多くの顧客が遠方から、たくさんの買い物を求めてくるからかもしれませんが少しでいい時もありますね。
しかし、カートが大きいとつい何かをカートに入れちゃうんです。余分なものまで買ってしまうのです。
このナッジは、コストコにとってはたくさんの買い物をしてくれるからいいのですが、顧客にとっては不利益なナッジ効果ですね。余分なものを買ってしまうのは…
このようにナッジ理論は、人にとって悪い効果が出てしまう事もあるので気を付けなくてはいけないのです。
身近な例を出しますね。
9.ナッジ理論:スーパーマーケット
食材の買い物に便利なスーパーマーケット。
略してスーパーです。
買い物時はレジが混んで嫌ですよね!
最近はスマホで時間潰せるから、なんとなく大丈夫ですけど…
並んでいる時にレジ付近を見ると、ガムやチョコレートがたくさんありますよね!
お菓子売り場にあるのに、レジ付近にもあるとは!
乾電池もあるから、買い忘れに気づくようにと思うでしょうがチョコレートやガムは買い忘れるだろうか?
最初から狙ったのか、置いてみたら売れたのかは分かりませんが、どうやらナッジ理論を適用しているようです。
買い物をササっと終わる時はいいとして、「夕食は何にしよう」「昨日は何を食べた?」「冷蔵庫に何が残っている?」「給食と被らないかな?」色々考えますよね。(毎日自分で作っていなくせに!と言わないでください)
たくさん考えながら買い物をしていると、脳が疲れて甘いものが欲しくなるそうです。
そしてレジでチョコレートを見るとつい買ってしまい、家に帰った後何で買ったんだろ?となる事もあるそうです。
そのような経験ありますか?
そうするとレジは少し待ってもらうくらいの設定が必要なのですね。
これもお店側のメリットであって、顧客のメリットではないのです。
10.ナッジ理論:厚生労働省
アンケートや検診の促進に厚生労働省も積極的にナッジを活用しています。
例えば、
1.□アンケートのお知らせを希望する。
2.□アンケートのお知らせを希望しない。
上記の1か2どちらかを書いておくとします。
もちろん出来るだけお知らせを配布したいのです。
1を書いた場合は、51.8%の人がチェックし希望したそうです。
では2の場合はどうでしょう。96.3%の人が希望したのです。3.7%の人がチェックしたのですね。
チェックする人は少ないという事ですね。ネットでの買い物も解除のチェックを入れないと、どんどん販促のメールが届きますよね。それと同じです。
このように厚生労働省でも活用しています。こちらから見ることが出来ます。厚生労働省へのリンク
11.ナッジ理論の危険性
結局のところ、ナッジは行動経済学ともいわれ何かしらの力で無意識に操られてしまうという事です。
良い方向に使われるならいいのですが、マーケティングやビジネスなどに使われ悪い方向にも当然行くわけですね。
「良いナッジ」と「悪いナッジ」。
「悪いナッジ」は、スラッジ(sludge:ヘドロ)とも言われるそうです。
かならずしも合理的に行動できない自分(人間)を理解しつつ、冷静に行動したいですね。
ありがとうございました。
行動経済学などを学ぶにはいろいろな書籍を参考にしてください。1冊10分 本の要約flier(フライヤー)こちらのサービスではたくさんの書籍の要約が書かれていますので、よさそうな本を選んでから購入し失敗しないようにしましょう。無料から選べます。
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