誰かに勧められたか、ネットか本屋さんでこの本を知りましたか?もしくは「イノベーションのジレンマ」を読んで、クレイトン・クリステンセンを知りこの本にたどり着いたのでしょうか。
学生さんでしたら将来の商品の開発に役立ちますし、メーカーで商品の開発や企画またはマーケティングを考えている人はもう一度原点に立つことが出来ると思います。
「自分の会社は世の中に価値を提供している」と自分は思っていましたが、本当にそうでしょうか?会社に勤めている人はみなさん胸を張って言えますか?
イノベーションを起こすために「顧客が必要としている本質を考え(見抜き)、それを乗り越える価値を提供する」事を考え成功して欲しい。という事がこの本に書かれています。
「商品やサービスはどのように企画すべきか」と「自分の会社は世の中に価値を提供できているか」をポイントに考えてみたいと思います。
この本に書かれている事例「ミルクシェーク」は引用しますが、その他は自分の考えを書こうと思います。良ければ読んでください。
1.ジョブ理論とは?
「どんな”ジョブ(用事、仕事)”を片付けたくて、あなたはそのプロダクトを”雇用”するのか?」私にとってこの問いはすっきりと腑に落ちる。私たちが商品を買うという事は基本的に、何らかのジョブを片付けるために何かを「雇用」するという事である。その商品がジョブをうまく片付けてくれたら、後日、同じジョブが発生した時に同じ商品を雇用するだろう。ジョブの片づけ方に不満があるなら、その商品を「解雇し」、次回には別の何かを雇用するはずだ。
「ジョブ理論」クレイトン・M・クリステンセン
翻訳家の「依田光江」さんは、無理になじみのある日本語に翻訳せず、作者の意図をストレートに伝えてくれたため、言葉に多少違和感がありました。しかし事例に当てはめると「のどが渇いたから、コンピにでお茶を買って飲む」ジョブは”のどが渇く、”雇用”はお茶を買う”という簡単な事です。お茶がのどの渇きを満足できなかったら、お茶を”解雇”し違う手段を選ぶことになる。
ジョブ理論とは当たり前で簡単なことではないか。と思いますよね。しかしクリンテンセンは20年かけてこの本を書いています。
2.ジョブ理論の要約:引用事例「ミルクシェーク」
この本を読み終えた人に聞けば、「ミルクシェークの事例」は記憶に残っていると思います。
あるファストフードのチェーン店がミルクシェークをもっと販売したいと考えています。
どのようにして販売数を伸ばしますか?
ファストフード店は、ミルクシェークを買ってくれた典型的な人(おそらく一番買ってくれる特徴のある人たち)に、「どうすればもっと買ってくれるか? 価格を安く? 量を多く? 種類を増やす?」このような質問をすれば「まあそうかな。」と答える人は多いでしょう。そうして10円安くしたり、チェコレート味を増やしたりします。しかし全く売り上げはアップしなかったそうです。
そこでコンサルタントはシェークの販売状況を確認し、まず朝の通勤途中で1人で購入するサラリーマンに着目する。サラリーマンは車での通勤の1~2時間の間に運転しながらミルクシェークを飲む。ミルクシェークが好きなのか?
なぜミルクシェークを買ったのか質問しても、はっきりと答えは出ない。ではミルクシェーク以外なら何を買ったのか?次第になぜミルクシェークを買ったかが明らかになっていく。
➀「ミルクシェークを飲む目的は、退屈になる1人での運転中に気を紛らわせるため」コーヒーではすぐに飲み終わってしまう。少しでも長い間飲めるようにストローで飲むドロッとしたものが良い。
➁「お昼までの空腹に対応する」ドーナツは車内が汚れる。午前中にお菓子を食べると罪悪感がある。結局カップホルダーに収まるミルクシェークが適している。
したがって価格、量、種類の問題ではなく顧客は「運転時間に退屈を紛らわし、お昼までの空腹を満たせるモノ」が欲しいわけで、それを解決するものが必要なのです。
ミルクシェークにフォーカスするのではなく、「運転時間に退屈を紛らわし、お昼までの空腹を満たせるモノ」=ジョブの解決を考えなくてはいけないのです。もちろんこの事例は朝の通勤時間ですが、その他の日時やその他の人なら別のジョブ(要求)があるわけです。
自分の行動や購買を考えると事例はたくさんありますが、メーカー視点で2例考えてみました。最近自分が思っている事で本には書かれていない内容です。
3.ジョブ理論の要約:自動車の事例を考える
自動車産業は、協力会社も含めてたくさんの雇用があり、たくさん輸出を行い日本の経済成長に寄与してくれています。
僕の仕事は自動車産業と直接かかわりないですが、最近消費者として思うのが軽自動車の価格の高騰です。150万以上さらには特別仕様にして200万以上の軽自動車がたくさん走っています。
”必要以上の広い空間”、”不要な電動スライドドア”、”ほとんど無意味のアイドリングストップ”、”軽自動車では滅多に使わないカーナビゲーション”
本来軽自動車は、”早く楽に移動できる手段”であったが普通乗用車以上の快適性や装備が備わり、安く買うことができ維持費も安いという特徴が崩壊しつつある。これは消費者の問題でしょうか?
自動車メーカーは、ラインナップとして最低限の装備の安い軽自動車も販売しています。それを選べばいいのでしょうがどうしても心理的に便利そうでかっこいいものを選んでしまう。
自動車産業には大きなインフラが必要なので、新規企業も入り込む余地が少ないく価格競争にはなりにくいです。自動車メーカーが必要以上の装置を付けて高く買わせる作戦にはまっているのではないか。冒頭に書いた「自分の会社は世の中に価値を提供できているか」を考えると、消費者に価値を提供しているのではなく、会社の存続のために必要のない機能を付けて高い軽自動車を作り上げていると思ってしまう。
ジョブ理論とは別の、心理的な働きがあり破壊的イノベーションが起こらなければ変わらないのであろうか。今後電気自動車の実用化で変革があるでしょうか。海外メーカーに潰されなければいいと思います。
4.ジョブ理論の要約:スマホの事例を考える
2021年携帯電話の通信費が見直され、2,000円台になってきました。
しかし、通信費は下がっていますがスマートホン自体が異常に高くなってきていますね。少し前は5万円もしなかったですが、最近では8万円、さらに10万円を超える価格です。
LINEとたまに電話。若い人ではSNSができれば十分です。これしかやらないのに高速CPUや高解像度のディスプレイ必要ないですね。充電も必ず毎日行うから2日使えれば十分です。
それなのにカメラが3つも4つもついて、4Kの高解像度とか、どうせ画面が小さいのだから必要ないですね。アプリも機能がどんどん増えるからメモリー不足になってしまう。
コモディティ化しているスマホにおいては、あらゆる必要のない機能を追加していくしか会社の利益は継続できないのか。自動車と同様に価値の押し付けになっているように感じます。
5.ジョブ理論の要約:脅威となるもの
著者のクリステンセンが言っていますが、ジョブ理論により商品が成功を成し遂げても、継続しない企業がほとんどであると。なぜか?
上記の、4.自動車の事例を考える。5.スマホの事例を考える。が当てはまると思うのですが、商売がうまくいくと会社はその商品で更に売り上げをあげ、利益を出そうとします。当然の流れかもしれませんが、そこにジョブ理論が当てはまらなくなっているのです。
経営者は、会社を拡大するために顧客を見ず、数字だけを見て判断を行う。結局、商品は売り上げを伸ばすために必要のないサービスを行い的が外れた商品になってしまい売れなくなっていく。ここが一番の問題で、会社としての組織が一番の脅威である。
6.ジョブ理論の要約:最後に
クリステンセンの顧客が必要とするものを提供する。というのは難しいけれど出来無くはない。「ドリルを売るには穴を売れ」というように顧客はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しいのだという事です。
ただこの本は、それだけが言いたいのではなく、一番言いたいのは顧客が欲しいものを見つけ続けるという会社の信念が必要だというのです。経営者も含めて皆がその思いで仕事を行い続け、数字だけに走るようなことをするなという事です。あなたの会社はどうでしょうか?
自動車やスマホは僕が勝手に思っている事です。この本には商品だけではなくサービスについてもたくさんの事例がありますので、読んでみて考えてください。
マーケティングの勉強はこちらでもどうぞ。>>
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